20/03/2026
シーダー関西さんのコラム「大阪市廃止(都構想)議論ではなぜ政令市の権限が問題になるのか」を読むと、意外な大阪市像がみえてきます。
#大阪都構想
澪っチャーNOTE-145◆大阪市廃止(都構想)議論ではなぜ政令市の権限が問題になるのか
繰り返す大阪市廃止(都構想)をめぐる議論では、しばしば「政令市である大阪市の権限が強すぎる」という主張が繰り返されます。
主に都市計画をテーマにした場面で出てくることが多く、吉村府知事も「都市計画の大枠は府が主導すべき」と発言されています。
たしかに、政令市は本来、都市計画に関して強い権限を持っています。
しかし、大阪市は都市計画権限を十分に発揮せず、実は大阪府が主導してきたという、政令市の中でも“例外的な存在”です。
強いはずの大阪市が実は弱いという逆転現象を説明します。
■ 都市計画マスタープランを作っていない唯一の政令市
都市計画マスタープラン(都市づくりの“全体設計図”)は、1992年から市町村が作ることになりました。
道路計画や住宅計画の上位計画に当たる都市計画マスタープランは、都市計画行政の指針であると同時に、市が行う各政策の整合性を確認する役目があるなど、都市政策全般に関わる重要な計画です。
ところが大阪市は、
政令市20市の中で唯一、今まで一度も作っていません。
大阪府内43自治体の中でも、大阪市だけが作っていません。
理由を聞くと、
回答は「府が策定するときに、市も協力して市の意見が反映されてるので、さらに作る必要はないと判断してる」とのこと。
都市マスは都市計画の“上位ルール”なので、これを自前で作らないということは、都市の将来像を自分で描いてこなかった、という意味になります。
そして、大阪市は、都市計画の“上位ルール”を自前で作らず、ずっと大阪府の方針に乗ってきたということになります。
■ 都市計画審議会の設置も遅い
都市計画審議会(都市計画を決めるときの“チェック会議”)は、政令市では2000年から設置が義務化されました。
多くの自治体は、建設事務次官通達により1960年代後半から自主的に設置していましたが、大阪市が設置したのは義務化された2000年になってからです。
そのため大阪市は、他都市が30年以上前から持っていた「府が作った都市計画に対し意見をまとめる場」を、長い間持っていませんでした。
ここでも、大阪市は「都市計画で独自に動いてこなかった」という特徴がはっきり見えます。
■ 実態は「大阪市の権限が強すぎる」どころではない
こうした事実を並べると、都市計画の分野では、
・大阪市は自前の計画を作らず
・府の都市計画に意見を言う機会を長らく持たず
・都市計画は実質的に大阪府が主導してきた
という現実が浮かび上がります。
つまり、吉村府知事は「都市計画の大枠は府が主導すべき」と発言していますが、都市計画に関しては、すでに“府への一元化”されていたとも言えます。
ある意味、都構想はすでに実現していたのです。
■ では、なぜ「大阪市の権限が強すぎる」と言われ続けるのか
大阪市は「府と対等に都市計画を担う政令市」というより、「府の枠組みに乗ることを前提にしてきた都市」でした。
なので、大阪市域の都市計画に対する批判は、本来大阪府に向けてすべきものかもしれません。
そして、その大阪府への批判を大阪市に向けるため「政令市である大阪市の権限が強すぎる」という物語が繰り返されるのです。
■おまけ
「大阪市が都市マスを持っていなかった」という視点をもつと、「府市対立」という説明は何だったんだ?と疑問に思う方もいるかと思います。
よく“府市対立の象徴”とされる高速道路の遅れやWTC・りんくうの混乱は、実は都市計画権限の衝突とは言い難いものです。
高速道路は国・阪神高速・地元自治体を含む多者調整の結果で、府市だけの対立とは言えません。
WTCとりんくうゲートシティも、バブル期の投資判断ミスが主因で、大阪市の検証(2004年)でも需要予測の甘さが指摘されています。
当時の府には湾岸全体の広域戦略がなく、市のテクノポート計画(1983年)が先行し、府の「大阪湾全体ビジョン」(1997年以降)は後から整備されたものです。
しかもWTCの都市計画決定(用途地域変更・高度利用地区指定)は府が行い、市は“事業者”に過ぎません。
都市計画の決定権者は府であり、府は開発をコントロールしうる立場にありました。
こうした事実を踏まえると、よく「府市対立の象徴」と語られるこれらの事例は、
都市計画権限をめぐる府市の衝突を示す証拠とは言えない、ということになります。
このように大阪市廃止(都構想)議論によく使われるフレーズには秘密があります。
次回は「大阪の富を大阪市に集めている」「大阪市は利益を独占しすぎている」、このフレーズについて解説します。
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