02/06/2026
インドネシア、石炭などの輸出管理導入 拙速な政策に日系企業も混乱 - 日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM214JZ0R20C26A5000000/
【ジャカルタ=押切智義】インドネシア政府が石炭やパーム油の輸出の国家統制を打ち出し、国内外の企業に混乱が広がっている。調達価格の引き上げや既存の長期契約の見直しを求められる可能性があるためだ。
プラボウォ大統領は5月20日、首都ジャカルタでの演説で「我が国の天然資源は国民のものだ。国家は海外に売却される正確な量を詳細に知る権利がある」と語り、資源輸出の統制を強めると表明した。
同日に公表した統制策は石炭やパーム油、合金鉄などの輸出を国営企業1社に集約するという内容だ。インドネシアは世界最大級の石炭輸出国で、パーム油でも世界最大の生産シェアを持つ。
資源輸出を国が統制
新設の国営企業、ダナンタラ・スンブルダヤ・インドネシアが対象製品を国内企業から調達し、すべての輸出業務を担うことになる。
6月からダナンタラへの移行を始め、27年1月から本格的に新制度を導入する。当初、9月としていたが、国内外の企業の反発を踏まえ、発表からわずか10日で導入時期を4カ月先送りした。
政府の狙いは国家収入の拡大だ。企業が輸出価格を当局に過少申告し、税負担を軽減する動きが広がっていた。輸出に国が関与することで価格や輸出量などの決定権を握り、外貨を増やしたい意図もあるとされる。
唐突感のある導入に企業には動揺が広がっている。「発表直前に噂はあったが、まさか本当に実行するとは思っていなかった。本社から問い合わせが相次いでいる」。総合商社のインドネシア駐在員はこう語る。
日本にとってインドネシアは石炭とパーム油で2位の供給国だ。これまで現地企業との間で輸入契約を結んでいた日本企業は、残り6カ月で国営企業との契約に切り替える必要がある。
現在のように複数の会社と交渉して、最もよい価格などの条件で購入することが難しくなり、「購入価格が上昇していく可能性がある」(日系商社幹部)。石炭の調達価格が上昇すれば、電気代の高騰を招く恐れもある。
長期の調達契約を結んでいた場合、同じ条件で引き継がれるかも不透明だ。ロサン投資・下流化相は21日「長期契約であっても価格が決まっていない場合、市場価格に合わせ見直しを行う」と語った。
予測できない政策
インドネシアは資源ナショナリズムを強めている。
ジョコ前政権(14〜24年)はニッケルやボーキサイト、銅の未加工鉱石の輸出を禁止した。国内での製錬を義務付けることで産業のすそ野を広げ、雇用を生み出す狙いだった。
プラボウォ政権の場合、国家の収入拡大や外貨流出の抑制を意識した資源管理政策が多い。経済団体や商工団体など産業界から十分に意見を聞かず、唐突に政策が発表されるため、企業が混乱に陥るケースが目立つ。
政府は国際価格を引き上げるため、1月にはニッケル鉱山の運営会社に対し26年の採掘量の大幅削減を求めた。運営会社によっては7割削減を指示されるケースもあり、業績への懸念が広がってる。製錬所でもニッケルが調達できず減産が相次いでいる。
25年には企業が資源輸出で得た外貨収益を国内の銀行に1年以上預金することを義務付ける政策が導入された。26年6月からは預金先を国営銀行に限定したり、ルピアへの両替を制限したりと運用が厳格になる。
在インドネシア中国商工会議所は5月、インドネシア政府の資源分野などでの政策に対し抗議を示す書簡をプラボウォ氏に送ったと明らかにした。政策が「安定性と継続性を欠く」と指摘し、中国企業が困難に直面していると訴えた。
現地に進出する日系企業製造業幹部は「政策の予見が難しく、計画的な投資が難しくなる」と不安視する。
財政悪化に焦り
プラボウォ政権が拙速な政策導入を進めるのは財政悪化の懸念が強まっていることへの焦りでもある。
無料の学校給食など目玉政策に巨額予算を投じるなか、経済成長の減速で税収などが想定を下回る。1〜4月の財政収支は約164兆ルピア(約1兆5000億円)の赤字に転落した。
金融市場は警戒感を強めており、2〜3月にはムーディーズ・レーティングスやフィッチ・レーティングスが信用格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。
中東情勢の混乱で石油製品の輸入額が膨らむ懸念も相まって、通貨や株式、債券がトリプル安になった。通貨は5月28日、1ドル=1万7900ルピア台の史上最安値を更新した。ジャカルタ総合指数も22日、約1年1カ月ぶりに一時6000を割り込んだ。
【ジャカルタ=押切智義】インドネシア政府が石炭やパーム油の輸出の国家統制を打ち出し、国内外の企業に混乱が広がっている。調達価格の引き上げや既存の長期契約の見直しを求められる可能性があるためだ。プラボウ.....