09/03/2024
AIによるフェイク情報の蔓延に対処する手段 公共放送やマスメディアの役割と責任
三石博行
21世紀は科学技術文明社会が展開し完成する時代である。情報科学技術がその推進力となる。AIはその一つであり、AIの活用が今後も進む。AI、つまり情報化社会がもたらす課題を考え、対応することがこの時代の社会文化の重要な必須課題となる。
今、米国を始め世界各国で行われる大統領選挙等、民主主義制度を支える政治活動の中で、AIによるフェイク情報の蔓延が課題になっている。2016年11月の米国大統領選挙で海外(ロシア)からの選挙介入を受けた米国では、2024年11月に予定している大統領選挙へのAIを駆使した巧妙な選挙介入が行われることを警戒する見解が出されている。
一般的に情報化社会では情報伝達の利便性の向上と共に間違った情報が拡散が生じる。何故なら、すべての人々が「情報を消費(受信)すると同時に情報を生産(発信)する人」となるからだ。情報社会では情報のプロシューマー化が進む。フェイク情報の蔓延は情報化社会の利便性の向上と表裏一体の関係にある。それは情報化社会の必然的一面でもある。AIが情報化社会を進化させ生産性の向上に役立つように、AIによってフェイク情報は高度に進化し続け社会混乱を引き起こすことは避けられない。科学技術史を俯瞰する限り、素晴らし科学技術は一方で最悪の道具(兵器)や機械になる。第三の産業革命の原動力として注目されているAIに関して、その負の側面にいち早く対応することが求められている。
総務省情報通信白書令和4年版によると2021年日本での個人のインターネット利用率は82.9%で、88.6%が国民がスマートホンを利用している。インターネット・スマートホンによって情報を簡単に素早く得ることが出来る。その意味で人々は日常的にフェイク情報に曝されている。匿名の個人によって流される情報の信憑性を疑う訓練がなければ簡単にフェイク情報を受け入れてしまうだろう。また、検索エンジンの側でも個人の好む情報傾向に合わせて情報提供を行うため、いつの間にか自分好みの情報のみに囲まれることになる。こうした情報産業のカラクリを知らない個人はそれらの情報のみを受け取ることになる。検索した情報の殆どがある傾向に偏ったものやフェイク情報であることが起こる。これが情報化社会の一面である。
フェイク情報から国民を守ることは民主主義社会の重要な課題である。そのためには、フェイク情報への監視や抑制のための制度、全世代への情報リテラシー教育の充実や公共放送、マスメディアのフェイク情報対策がある。特にここでは、これまであまり議論されなかったマスメディアの役割について述べる。報道の公共性が保障されている場合、多くのフェイク情報源は匿名個人である。国民が匿名個人の情報の信憑性を疑う文化があれば、フェイク情報に翻弄されることはない。その基準を保障するのが公共放送やマスメディアである。それがフェイク情報がどうかを判断する基準としてマスメディアは責任を持たなければならない。その信頼が国民にある限り、人びとはフェイク情報の餌食になならない。それは情報安全保障上大切な課題の一つであると言える。