20/08/2026
「チリン、チリン」がつなぐ長崎
― 一台のパン屋台から、一輪のバラへ ―
「チリン、チリン」――。
その音を聴くと、
どこか懐かしい長崎の風景が浮かんできます。
100年ほど前の長崎。
長崎手彩色絵葉書の中に、
一台のパン屋台があります。
街には、パンをはじめ、豆腐や野菜などを売り歩く行商がありました。
店へ買いに行くのではなく、
商いのほうから、人々の暮らしの中へ。
そして、街に響く小さな鐘。
「チリン、チリン……」
鐘は、人々に行商が来たことを知らせる合図。
それは商売の音であると同時に、
人と人をつなぐ音でもありました。
長崎の老舗パン店・東洋軒には、パンやアイスキャンディーをリヤカーに積み、鐘を鳴らして街を回ったという聞き取りが残っています。
その後、ロバにリヤカーを引かせて販売していた時期もあったと伝えられています。
坂の街、長崎。
リヤカーが進む。
チリン、チリン。
誰かが窓を開ける。
子どもが走ってくる。
そこには、確かな日常がありました。
⸻
そして、1945年8月9日。
その日、長崎の日常は失われました。
パンを売る人。
パンを買う人。
家族の食卓。
子どもたちの笑い声。
手彩色絵葉書に残る風景は、
単なる「昔の写真」ではありません。
そこには、
原爆が落とされる前の長崎にも、
確かな暮らしがあった。
その記憶が残っています。
だから未来へ伝えたいのは、
被爆の悲惨さだけではありません。
その前にあった、
美しい日常も。
パンを買えること。
家族と食卓を囲めること。
子どもが街を走れること。
平和とは、
そんな普通の一日の中にあるものだからです。
⸻
戦後。
長崎の人々は、
焼け跡から少しずつ暮らしを取り戻しました。
そして1960年、
前田冷菓が創業。
長崎に根付いていた行商文化の中で、
鐘を鳴らしながらアイスを届けるスタイルが親しまれていきました。
それが、今も長崎の夏を彩る
「ちりんちりんアイス」です。
#チリンチリンアイス
鐘の音を聞いて、
子どもたちが駆けてくる。
「チリン、チリン」。
その音は、
戦後の子どもたちの笑顔とともにありました。
そして、その子どもたちは、
今、大人になりました。
かつて子どもだった私たちの記憶にも、
その音は残っています。
⸻
そして今。
小さなヘラで、
アイスを一枚ずつ重ねる。
花びらのように。
最後に咲くのは、
一輪のバラ。
手彩色絵葉書も、
一枚一枚、人の手で色が添えられました。
パンを届けたのも、人の手。
鐘を鳴らしたのも、人の手。
バラを咲かせるのも、人の手。
人の手から人の手へ。
長崎の日常と記憶は、
受け継がれてきました。
⸻
やがて、被爆者の方々の声を、
直接聞くことができない時代が訪れます。
だからこそ、
悲惨な過去だけではなく、
その前にあった、美しい長崎。
そして、もう一度日常をつくり直した
人々の力も、未来へ渡したい。
そんな想いを、
[Alexandros]「ワタリドリ」とともに。
https://youtu.be/O_DLtVuiqhI?si=i9EkrvcZA7EnSSYo
記憶は、渡っていく。
一人から一人へ。
一世代から次の世代へ。
そして、未来へ。
手彩色絵葉書の中の一台のパン屋台。
そこから聞こえてくる、
「チリン、チリン」。
その音の先には、
戦後の子どもたちの笑顔がありました。
そして今、
その先に一輪のバラが咲いています。
一枚の絵葉書から、
一つの記憶へ。
一つの記憶から、
次の世代へ。
「チリン、チリン」。
今日も長崎のどこかで、
その音が響きますように。
子どもたちの笑顔が、
未来へ渡っていきますように。
一台のパン屋台から、一輪のバラへ。
一枚の長崎。
一人の手から、未来へ。
Peace by Piece Nagasaki