02/08/2026
キプロスの太陽、長崎のザボン――海と人が育んだ、果実と文化の物語
地中海に浮かぶ島国キプロスと、日本の西の玄関口として栄えた港町・長崎。
遠く離れた二つの土地には、太陽と海の恵みを受け、人々の知恵によって豊かな文化を育んできたという共通する魅力があります。
2026年7月から続編が放送されているドラマ『VIVANT』をきっかけに、キプロスという地中海の島にも関心が寄せられています。
VIVANT main theme
https://youtu.be/MuGFcUggtDs?si=W7xFa5o3IVi8GyJz
キプロスは、温暖な地中海性気候に恵まれ、レモンやオレンジなどの柑橘が人々の暮らしに親しまれてきました。また、古代からヨーロッパ、アジア、アフリカを結ぶ東地中海の要衝として、多くの文明が交わった歴史ある島です。
一方、長崎もまた、海を通じて世界とつながった街です。
江戸時代、出島は日本とヨーロッパを結ぶ交流の窓口となり、医学、天文学、博物学など、多くの知識や文化が海を越えて伝えられました。
そして長崎には、海を越えて伝わった一つの果実を、人々の手で大切に生かしてきた物語があります。
苦味を、やさしい甘さへ。
長崎が育んだ「ざぼん漬」の物語です。
ザボンは東南アジアを原産とする柑橘で、中国を経て長崎へ伝わったとされています。
海外との交流の窓口であった長崎は、新しい文化だけでなく、新しい味との出会いも受け入れてきました。
やがてザボンは各地へ広がり、熊本では晩白柚、高知では土佐文旦など、それぞれの土地で豊かな実りを育んでいきました。
長崎は、その出会いと広がりの歴史を見守ってきた港なのです。
ざぼん漬の主役は、果実そのものではありません。
一見すると捨てられてしまう、厚く香り豊かな皮です。
そのままでは苦味のある皮を、長崎の人々は何度も水にさらし、丁寧に蜜で炊き上げました。
時間と手間をかけることで、苦味は消え去るのではなく、やさしい甘さへと変わっていきます。
その姿は、長崎という街の歩みにも重なります。
異国との交流、文化の受容、そして原爆による深い悲しみ。
多くの苦難を経験しながらも、人々の知恵と優しさによって、未来への希望を育んできました。
ザボンは、ビタミンCや食物繊維などを含み、爽やかな香りで人の心を和ませてくれる果実です。
その恵みを余すことなく生かそうとした先人の知恵から生まれた「ざぼん漬」は、単なる銘菓ではありません。
「いただいた命を大切にする心」
「もったいないという思い」
「時間を惜しまず手をかける優しさ」
そのすべてが、一粒の中に込められています。
そして熊本の晩白柚もまた、大地の恵みと人々の努力によって育まれてきた宝物です。
2026年7月、熊本では大きな地震が発生し、多くの方々が不安な日々を過ごされています。
果実が大地に根を張り、時間をかけて甘さを蓄えるように、人の心もまた、支え合いによって希望へと育まれていきます。
長崎のザボン、熊本の晩白柚。
苦味をやさしい甘さへ変える知恵は、果実だけではなく、困難を乗り越えようとする人々の力にも重なります。
地中海のキプロスと、日本の西の玄関口・長崎。
場所も歴史も異なる二つの土地ですが、自然の恵みを人の知恵で受け継ぎ、次の世代へつないできたという点で、静かな共鳴があります。
一つの果実、一つの港、一つの出会い。
そこには、違いを越えて人と人をつなぐ、温かな物語があります。
Peace by Piece Nagasaki
一枚の絵葉書から、一つの果実から、平和の記憶を未来へ。