23/04/2026
『山鹿素行』
山鹿素行(1622–1685)は、
江戸前期に武士の生き方を根本から問い直し、
後に「山鹿流兵法」と総称される体系を築いた思想家です。
素行自身は「武士道」という語を用いず、
「士道」 をもって武士の道を示しましたが、
その思想は後世の武士道形成に大きな影響を与えました。
その初期の代表作が
『兵法神武雄備集』(慶安四年〔1651〕自序)です。
内容は、武具・装備を論じる 武備篇、
城郭の構造や防備を述べる 城制篇、
戦いの法則や軍陣の心得を説く 戦律篇 など多岐にわたります。
しかし、この書の根本には「心法」が置かれています。
素行は、武士の心には本来「明徳」と呼ぶべき本体があり、
迷いや私心が生じると、
そこに相対が立ち、心が乱れると説きました。
その相対は、敵・己・私・感など様々な姿をとり、
本来の心の主を曇らせます。
この相対の起こりを見抜き、
私心を磨き、修め、制することを
「克己」
と位置づけた点に、
素行の士道の核心があります。
この士道の思想は、後の時代において、
武士の心構えを説く多くの書や教育に影響を与え、
のちに「武士道」と総称される精神的伝統の形成において、
一つの重要な源流として位置づけられてきたのでしょう。