14/08/2026
8月12日(水)の経営者モーニングセミナーでは、芦北町役場の橋本啓之・防災監が「陸上自衛官OBにできること~PDCAサイクルとIDAサイクルの実行」をテーマに講話をされました。自衛官として30年以上奉職してこられた経験をもとに、OBとして地域防災のために積極的に行動されていることに感銘を受けました。以下は講話の抜粋です。
・私は昭和40年10月10日、人吉生まれ。去年還暦を迎えた。元陸上自衛官です。昭和59年高校卒業後、一般二等陸士として入隊し、北海道から九州の12ヶ所の駐屯地及び学校で勤務し、久留米の幹部候補生学校の戦術教官を最後に令和2年8月に定年退官した。
・二歳上の兄は、中学校を卒業して少年工科学校という横須賀にある陸上自衛隊の学校を受けて、そこから自衛官としての人生をスタートさせた。私も同じコースを辿ろうと思ったが、受験に失敗した。それから、目標を失い乱れた生活を送ってしまい高校へも休みがちになった。今思えば早めに挫折したことは良い経験になった。
・高校の学業に意欲の無い私は、近所の酒店でアルバイトを始めた。高校卒業時にそのままその酒店に就職しようと思い店主に「僕を雇ってください」と言ったら、「バカなこと言うな」と言われて、「自衛隊に入って大型免許を取ったら、雇ってやる」という約束のもとに自衛隊に入隊した。ところが、自衛隊の水が合ったのか、陸曹の試験、幹部試験と合格し、最後は特別昇任の一等陸佐として定年退官、今でも一等陸佐の予備自衛官として年に1回の招集訓練に参加している。
・芦北町の防災監として、昨年の4月から勤務し、現在に至っている。各自治区、福祉施設、学校等に入らせて頂き、防災計画作成及び防災訓練実施の支援をさせて頂いている。
・陸上自衛官のOBに何ができるかというと、私に出来ることは自衛隊で学んだ「戦術」を活用して防災計画作成及び防災訓練実施の支援をさせて頂いている。「戦術」を分かりやすく伝える言葉として、孫子の兵法に有名な言葉がある。いわゆる「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」。これを実践した人が宮本武蔵。なぜ彼が生涯無敵だったかというと<敵を知り己を知れば>の原理「優勝劣敗」<強い者が勝ち、弱い者が負ける>を理解し、それを生涯実践したから。宮本武蔵は自分より強い人と戦わない。もし自分よりも相手が強ければ、敵が不利な状況、自分が有利な状況で戦った。
・これを防災に置き換えると、ハザードマップで<ここはどのぐらい浸水するか>、気象情報で<今後の降雨量>、津波想定で<この地域は、何分で、何メートルの津波が来るか>、そういう自然災害の情報を知っておかないと自分の身を守れない。これが防災における敵を知るということになる。世の中の災い、地震、事故、ウイルス、テロ、戦争も全てその仕組み(敵)を理解しなければ自分の命は守れない。
・この「優勝劣敗」という原則からいくと、自然災害に人間は勝てない。<自然災害からは逃げるが勝ち>となる。防災においては、流域治水と言われるハードの面のダム、ため池、河川を整備して自然災害と戦わずして勝つ、いわゆる「戦略」が重要だ。それでも人間の準備した防御力を上回って自然災害は発生する。その時にどうやって生き延びるかに戦術を活用すると「当初は逃げる」守勢作戦ということになる。そして次は、「逃げ遅れた方々を自衛隊・消防・警察等、公助の力で救助する」攻勢作戦になる。この戦術には戦いの9つ原則があり、米軍の教範も自衛隊の教範もこの原則がベースになっている。
・この9つの原則を見ると戦術と経営学の思考が同じであることが分かると思う。またこの9つの原則の中で一番重要なのが「目標」の原則。目的を達成できる具体的な目標を確立して、その目標に対して、総合的な力を集中し、かつ効率的に目標を達成できる最良の方針を決定する思考過程が「状況判断の思考過程」だ。皆様もいろいろ事業をやっているその中で、敵がいるはず。その敵に勝つ為に具体的な目標を確立し、目標達成するための最良の方針を決定する際にこの思考過程が活用できる。方針は1H5W「誰が」、「何を」、「何時」、「どこで」、「どうやって」を明確にする。方針が二つ以上ある際は、敵の可能行動と組み合わせて分析(シミュレーション)し、各方針の利点・欠点及び欠点に対する処置を明らかにする。分析する中で、方針を比較する要因が出てくるので、最も重視する比較の要因にしたがって、最良の方針を決定する。最良の方針が決定したら、方針が実行できる要領を具体化すると計画になる。
・次にIDAサイクルについて。目標を達成する為に計画に基づき行動するが、先ずは情報の収集が必要。情報の頭文字は「I」、情報には「インフォメーション」と「インテリジェンス」がある。「インフォメーション」というのは一つ一つの情報。例えば釣りを趣味としている人にとって、天気が晴というのは一つの情報だが、それだけで釣りに行こうとはならない。潮位や最近その場所で釣れているのか、といったあらゆる「インフォメーション」を集めて分析し、釣りに行くという行動を決心できる情報「インテリジェンス」に変える必要がある。
・この時「インフォメーション」を分析して「インテリジェンス」にするには正しい知識が必要になる。そうなると自分1人だけでは無理、防災であれば、気象のことは気象庁熊本地方気象台に、河川のことは国交省八代河川国道事務所に支援して頂く。各情報のプロの支援を受けて「インテリジェンス」の精度を上げて正しい決心ができる様にする。
・次に正しい決心をしたら行動に移す。行動しなければ何も目標は達成できない。また決心しても行動するには普段から計画を作成して訓練をしておかないと動けない。普段から計画を作成し訓練をして教訓を案出し、教訓を計画に反映する。これをPDCAサイクルと言う。普段からPDCAサイクルを回しておかないと、いくら正しい決心しても、行動には移せない。防災の場合は当初命を守る為に回す。そして守れた命を守り続ける為に回し続ける。皆様の経営も同じではないでしょうか?
・芦北町は地域防災計画に基づき11月に総合防災訓練を実施します。目的は、地域防災力の向上。訓練を通じて地域防災力の3本の矢として位置付けている。町役場職員の災害対処能力の向上、消防団の強化、自主防災組織の育成を図って参ります。危機管理における組織のあるべき姿は、危機に対して祈る組織から備える組織になることだ。備えるとは防災計画を作成して防災訓練を実行し、教訓を案出し、教訓を計画に反映する、PDCAサイクルを回し続けること。その為には、町民皆様のご協力が必要となる。消防団は葦北郡の消防操法大会に優勝した。我々役場職員も頑張ります。自主防災組織は全ての町民の皆様です。本日は貴重なお時間を頂き、ありがとうございました。どうか今後もご協力・ご支援のほど宜しくお願いします。