14/07/2026
【森とレジリエンス屋久島編2026】屋久島側のプログラム案内人であり講師の田平拓也さんをご紹介。
田平さんは、屋久島ガイドでもあり映像カメラマンでもあり。屋久島の魅力について、映画やテレビ番組を含めて世界中から屋久島に訪れる撮影隊をナビゲートする、屋久島森ガイドのプロ中のプロ。
以前本人が書いたエッセーの中でこんなことを語っていました。
「枯れ木に花咲くに驚くな、生木に花咲くに驚け」
「江戸時代の思想家、自然哲学者である三浦梅園の言葉です。森を案内する際の目線として心に留めています。人は枯れ木に花が咲くような物珍しい現象に意識を奪われがちですが、身近にある植物の花が咲いている現象を当たり前と捉えず、今あるものに心奪われる感性が必要ではないかと問うた言葉だと思います。日常の景色にある景色の有難さに気づくことができれば日々感謝の気持ちで満たされます。
この梅園の言葉を「写真」で表現される上田義彦さんと森をご一緒できた事が僕にとって人生の転機でした。400 年の森を歩いている姿がどこか樵(きこり)のお師匠さんに通じるものを感じたのですが、それは自然に対して礼節を持って接している事や自然を観る彼の眼差しがとても優しいものだったからだと思います。
撮影は 5 分ほどで歩ける距離を1 時間かけて歩くペースでした。これまで多くの時間を森で過ごしてきましたが、これほど時間をかけて歩いた経験はありません。そして 8×10 カメラで景色を切り撮った後に覗かせてもらうと今まで見たことがない美しい景色が広がっています。時折、彼は撮りたい世界について言葉にしようと(傍にいる僕らに教えてくれようと)するのですが、直ぐに「あぁ、違う。これ(言語化すること)は僕の仕事ではない」と。そして「頭(思考)に追いつかれたらいけないんだ、感じる方が先に来ないとね」と話をしてくれました。これは評論をするのは僕の仕事ではなく、僕はただ感動を形にする事が仕事だと言うのです。
実際、彼の作品には命の根源が宿っているように感じられます。彼と出会った事で生木に花咲く普遍的な「美」をより深く体感することができました。以来、森の中で1歩1歩を大切に歩くようになった気がします。
親の影響で3歳から山に登り始め、様々な山屋と言われる登山愛好家に会ってきました。自然の中にいれば感性が育まれ、自己成長の機会もあるかと思います。ただその過程なのでしょうか、頑固な山屋、他人を顧みることができない大人たちに会う機会も少なくありません。日常(慌ただしい都会の空気)をそのまま森へ持ってくるからなのでしょうか。
レジリエンス講座で教わった「自分もたいせつに。隣の人もたいせつに。その両方が交わってはじめて、レジリエンスは育まれる」(清水美香)。この言葉を森の中で感じることがあります。ゴールを目指す登山の中で友人同士、家族、恋人、そしてはじめて会った登山者同志が友情や感動を共有する機会が生まれることがあるからです。この機会をコーチングをするのもガイドの役割のひとつだと思います。
ゴールを設定して目指す登山とは別のアプローチとして、生木に花咲く当たり前の景色を当たり前と捉えずに一瞬一瞬の変化に気づいてもらえるようなコーチングをすることができれば、森との向き合い方や「まなざし」の向く先の変化から「自然―人間―社会システムを連続的に捉える力(うつわ)」(清水美香)を育むことができるのではと考えているところです。
人間は自然の力には適わないこと、自然の前では謙虚になり、自然から学ぶことが人間の品性を高めることを教えてくれます。自然の中には間断ない世界が広がり、完全に答えしかないからです。対峙の仕方、歩き方次第で眼差しと見えてくる景色が変わると思います。」
少し前のポストも併せて。今年も、ここに描かれているような一瞬に出会えるといいな。
【今年のプログラム詳細】→https://gcrc.or.jp/programs/programs0009/
【屋久島の引力】
三菱UFJニコスが発行する会員情報誌「PARTNER」の8月号では、移住者の方から見た屋久島を特集しています。人々を引き寄せる魅力がたくさんある屋久島。今回は、その数ある魅力の中から「満天の星」をご紹介します。
写真は白谷雲水峡の山頂にある太鼓岩で撮影されました。
撮影に同行したガイドの田平拓也さんは、その時の感動をこう語ります。「屋久島は9割が山で、その8割が国有林のため、山に人工の明かりはありません。柏倉さんの写真撮影を通して、星がこれほどたくさん存在するんだと知ることができました。それは、宇宙とつながるような素晴らしい時間でした。」
移住者たちは口々に、屋久島の星空の素晴らしさを語ってくれました。「晴れていれば、山に登らずとも家の近所の暗い浜辺などには、驚くような星空がある。天の川も1年中見られるし、流れ星もまさに“見放題”だ。そもそも夜は真っ暗になることや、月明かりがとても明るいことなど、都会では忘れられている夜の素晴らしさを教えてくれる。それが星空の引力だ。」
写真:鹿児島県・屋久島(太鼓岩/白谷雲水峡の山頂)
撮影:柏倉陽介